8月13日(月) 晴れ
 今日は日本に行っていた菊池先生が帰ってきた.研究室は予約の客で病院の待合い室のようだ.どこでも大変人気がある先生なんだなと感心する.
 お昼を挟んで(昼はステーキを食べた)菊池先生と長いこと話し込む。話題は人やプロジェクトのマネージメントについてだ。大学も人、会社も人。人が働く気にならなければ組織は発展しないという話。そして家族のこと。社会の変化。。
8月14日(火) 曇り パンク/トラベラーズチェック
 朝8時20分に宿出発すると、車の異音に気づく。妙に走行音がうるさい。どうしたんだろうと思っていると一台の車がすっと寄って来て「 ガッタ フラットタイヤ!」と叫んでくれた。そうかパンクか。車を停めて確かめると確かに後輪がパンクしている.パンクなんかこの10年の間一度も経験したことないのに..しょうがないからスペアタイヤと交換しようとすると,なんとスペアタイヤとジャッキはあるが,スパナがない!絶句する.レンタカー会社が車から降ろしてしまったのか,アメリカではそもそも車載工具などないのか..パンクしたまま走らせてタイヤにいいわけはないが,ここはしょうがいのでそのまま走ってガソリンスタンドまで持っていくことにする.ありがたいことに昔のタイヤと違ってパンクしたままでもある程度走れるらしい.いや走れなかったらお手上げだ.ハザードをつけながらゆっくり走りなんとか修理工場を見つけ転がり込む.そこのお兄さんに言われるとおり車をバックでガレージに突っ込むとお兄さんが手早くジャッキアップして電動ドリルでボルトを緩めてタイヤをはずす.タイヤをまわして釘を発見してペンチで抜く.ここまでは日本と同じだが..タイヤレバーでリムからタイヤをはずすと思いきや,パンクした場所に外側からもう一度ドリルで穴をあけて,そこにガムみたいなものを突っ込んでハイ終わり15ドルだって.おいおい.自転車のパンク修理のようにパッチをあてたりしなくて大丈夫なの?これは最近の車のタイヤの進歩なのか?アメリカの修理方法なのか?誰か詳しい方,教えてください.こんなタイヤで時速70マイルで走り回って大丈夫なのかしら?? それは夏の終わり,アメリカを去るときにわかることでしょう.
 ノースキャンパスに着く直前に,そろそろキャッシュが少なくなってきたので日本から持参したトラベラーズチェックを換金することにした.アナーバーの町のどこにでもあるような銀行の一つに入って聞いてみたら,「口座を持っていない人はだめ.でもアメリカンエクスプレスのトラベラーズチェックなら口座がなくてもよい」とのこと.トラベラーなんだから口座なんか持っている訳ないだろ.トラベラーズチェックはお守り代わりに持ち歩いているものの,実際に換金するのは実ははじめて.どこのトラベラーズチェックか見てみたら,「第一勧業銀行」って書いてある.消滅した銀行ではないか(本日2度目の絶句).これって考えてみれば15年以上も昔に作ったチェックだ.銀行の人がチェックを見て「はいだめ」って返す.「えーっだめなの!」となんとも間の抜けた会話が続く.「トラベラーズチェックは安全ですよ」と海外旅行の手引きに書いてあるけど,使えなければ紙切れである.たぶん,デトロイト国際空港の換金所までいけばなんとかなると思うが..少なくともこの近辺では一般旅行者のトラベラーズチェックは役立たずらしい.対策はまた考えることにした.
 夕方、一仕事終わって外から帰ってきた来た菊池先生とお茶を飲みながら話し込む。今日の話題は学会の運営の仕方、大学の組と改組のこと、教員が学生に教えるべきことなど。
 8月15日(水) 晴れ 携帯
日中,大学で仕事をした後,アウトドアショップREIに立ち寄り、ハンディGPSの地図ソフトを購入。また、となりの電気屋でプリペイドの携帯を買った。やはり,アメリカでも携帯がないと何かあったときに不便だ.特に今回は一人旅なので安全のためにも必要だ.日本から持ってきた携帯は先週の日曜日の日記にも書いたように壊れてしまった.携帯電話は10ドル分の通話料込みで20ドルだった(安い!)。それに加えて25ドルのプリペイドカードを購入した。ついでに国際電話のプリペイドカードを5ドルでインターネットから購入した。これでアメリカ国内は数十時間、日本へも2時間くらい通話できるはずだ。まずは帰国まで困らないと思う。携帯を日本でレンタルして海外旅行に行くより(ある程度アメリカで動ける人は)圧倒的にこちらの方が安いのである。
8月17,18日(金,土) 晴れ 旅行
 建築は構造力学の見地から興味があるが,たまには芸術として見るのも良いものだ.突然思い立ち,近代アメリカの有名な建築家F.L.Wrihtの作品を見るために小旅行に出た(と言っても1000マイルくらい爆走した).ミシガンからエリー湖に沿ってオハイオ州,ペンシルバニア州を超え、ニューヨーク州Buffaloでマーチン邸と彼のエリー湖の湖畔の別荘Gray Cliffを見た(バッファローはナイアガラの発電と運河の要所として20世紀初頭にはニューヨーク以上の大都市として栄華を極めた町なのだ).それから,ペンシルバニア州にピッツバーグ近郊に移動し,Falling Waterとそこから車で20分ほどのところにあるKentuck Knobの2邸を見学した.これらはピッツバーグの金持ちの別荘として設計されたものだ.どの建物も見学は,勝手にはできず,16ドル払って丁寧な説明つきのツアーに参加するのである.残念ながら屋内の写真撮影は禁止だった.
 洋の東西を問わず,人は成功してお金ができると,この世に楽園を作ろうとして膨大なお金を住まいにつぎ込むものらしい.森の中に美しい家を建てて住めば幸せを実感できるのだろうか?マーチン氏は大恐慌で一文なしになり,その家は荒れ果てたまま長らく手入れされずに最近になって修復された(今も工事中)ものだ.また,「家族の団らん」を重視して暖炉の設計は特別気を使ったというWriht自身も,家族を捨てて,愛人とウィスコンシン州にタリアッセンというすばらしい邸宅を建てたが,仕事で留守にしている間に,使用人にこの愛人を殺され家は放火されたという凄惨な経験をしている.やはり幸せというのは,家の豪華さでは語れないものである気がする.なにはともあれ,2軒の別荘はすばらしい自然の中に作られており,建築とともにペンシルバニア州の雄大な景色を堪能することができた.
 全く別件だが,この旅では日本語を教えているという若い白人女性に非常に流ちょうな日本語で話しかけられた.彼女は,女の人と一緒で,ふたりの仕草から推し量るにレスビアン夫婦のようであった.その人の醸し出す雰囲気が非常にunusual だったので忘れられない(細かいことを書いている時間がないので話はここまで).
8月19日(日) 雨 デトロイト空港
アナーバー周辺のホテルは取れなかったのでホットワイヤというウェブでディスカウントしているホテルを探し,デトロイト空港のマリオットホテルに泊まった.空港付近には20,30軒のホテルがあるが,規制によるものなのか,遠くからホテルを探せるようなネオンがない.この時,新しいハンディGPSがものすごく役に立った.なにしろ自動車に搭載されているGPSのように目的のホテルを検索し,ガイドしてくれるのだ.ホテルは立派で申し分なかったが,通常の8%の消費税に加え,空港税みたいなものを取られ,予算よりも40ドルくらい余計に払った(うち16ドルはネット接続料金).アメリカは宿泊料金の高いホテルほど何をしても高くつく.ネットもアナーバーのMicrotel Innは無料だったのにここは超高額だ..デトロイトまで戻ってくると,やはりミシガンは一風変わった州であるような気が改めてする. サマセットモールというハリウッドにもないような大金持ち用のショッピングモールがあり,ベンツやポルシェで買い物に乗り付けるような金持ちがそれなりの人 数いる一方で,衰退する自動車産業のせいで貧しい人は徹底的に貧しい.貧しい人たちが住む町は正直言って家もみすぼらしいし,道路もがたがただ.アメリカ社会の複雑さとほんとうの「格差社会」を学ぶにはよいとろではあろう.今日はおとなしく部屋から出ずに仕事を一日した.夜中になり風向きが変わったのかホテルの真上をジェットが飛行するようになって多少うるさかった.