8月5日(日)雨
 まだ6時くらいかな,と思って時計を見たら8時を回っている.今日は珍しく朝からまとまった雨で外が薄暗い.ほぼ一日,
自分の部屋で過ごす.夕方,スーパーに行って来てサラダとサラダを巻く薄いパン(ギリシャの食べ物らしい),チキン一切れ,マンゴー1個を買ってきた.空腹だったのか買いすぎた.とにかくこちらは大量に袋詰めで売っているのでなかなか一人分の食材を調達するのが難しい.また,チキンはウィングだのブレスト,ドラムとパーツを指定しないといけないところが日本とちょっと違うところだ.日本ではマンゴーがいくらで売っているのか知らないが,ここではかなり大きいものが1ドルである.かぶりついて見るとうまい.しかしこれ一つでおなかいっぱいになってしまい,茫然と残った食材を見つめるのだった...
8月6日(月)曇り
 運動不足を感じて大学まで歩くことにする.日本では歩くことが大好きだったのにアナーバーではほとんど歩いていない.
明確な理由はないが,広すぎて歩いても歩いても景色が変わらないことも理由のひとつである.こういうところを歩き続ける訳である.歩こうという人もいないため歩道もなく芝の上を歩く.日本から
もってきたハイキング用のゴアテックス仕様の靴のおかげで朝露にぬれた芝の上も濡れずに
歩くことができる.あちらこちらに自生しているお花畑がある.何の花だろうか.至る所で咲いているのでこのあたりの代表的な夏の花だと思う.40分も歩くとノースキャンパスの入り口の
サインが出てくる.ここから研究室まで15分くらいか...途中に工学部の学生プロジェクトの部屋があった.ミシガン大学はソーラーカーを学生達が作ってレースに出ている.
その作業場もここにあるらしい
ミシガン大学のキャッチフレーズは「Go Blue!」である.うちの学校だったら
盛んに学園が使っているピンクの桃のマークから「Go Pink!」か....
こちらのソーラーカープロジェクトは設計と言うよりはまず資金集めに知恵を絞るらしい.集めた金でソーラーカーを作成をする機械や職人も雇うとか.外国遠征までしており,学生プロジェクトにしては大変規模が大きい.技術の習得もさることながらプロジェクトリーダーの育成として大学もいろいろと協力しているようだ.
9時半に研究室に着いた.50分かかったことになる.もうちょっと早く歩かねば.
6時半まで研究室でお仕事.帰りはコースを変えてノースキャンパス沿いのPlymouth R.D という広い道に沿って歩いた.目障りな水道タンクがあるが,近寄って見るとコンペに勝ち残った優秀なデザインとの記念碑があった....(どうもいいデザインには思えない).
8月7日(火) Rain and thunderstorms
 朝からまとまった雨.日本から持ってきた雨具を着て研究室に行く.今日はノースキャンパスそばのモールに車を置き,そこから歩く.研究室で仕事をしていると建物に警報ベルが響き,(日本のようにジリリという音ではない.映画「エイリアン」の宇宙船自爆1分前のような,コンピュータ音),コンピュータの声で "Evacuate this building"と繰り返す.何事かと思ったが,皆慣れきった様子で建物を出る.なんでも最近は月に一回程度,このようなことがあるそうだ.天気も回復したので少し研究室の周辺を写真に納めた. これが研究室のあるECCSとその隣のGGBROWNという校舎.ノースキャンパスでは最も古い建物群のようだ.ECCSは電気とコミュニケーションのなんとかという長い名前の略で,G.G.BROWNは工学部の初代学部長の名前である.
それに隣接するように建てられているのが化学系,通信系の建物だ.芝生の対面にたっているのが,クライスラー
の寄付によって作られたマルチメディア図書館.近寄ると結構大きいことが分かる.本はそれはそれは何でもある.工学部の建物は会社の名前が着いているものが多い.最近は東大など日本の大学でも盛んに行っているが,ミシガン大学では会社に寄付を依頼して建物や研究設備を作っている.このようにおよそ大学では小学校や中学校とは異なり,寄付を募るのは個人ならぬ大会社なのである.
 
8月8日(水) Clear  Partly Cloudy
 8時半に宿を出てスーパー(Busch's)でパンの薄焼き(ピタカ?)とサラダを買う.これでサンドイッチを作って昼飯にするのだ.アナーバー生活がはじまって10日ほど経つが,外食はほとんどしていない.レストランがダウンタウンに並んでいるが,一人で行くのはめんどうくさいし,量が多過ぎる.第一酒を断っているので,うまい「つまみ(おかず)」を体が欲さない.アナーバーはずいぶんと日本食レストランが多いようだ(外国人経営).でも価格が高めなので,日本食が懐かしくなればコーリアンレストランに行くつもりだ.昔は,とにかくお肉が安いので食べまくったものだが,今は歳をとって基礎代謝量が少ないのでそんなことをしたら短期間で不健康な体のできあがりと心得ている.大学ではスターバックスのコーヒー(1.6ドル)が安いので結構よく飲んでいる.これも,濃いので飲み続けると帰る頃には胃にきそうである.
 歩き続けてやっと大学に着いたのに自分の部屋の鍵が出てこない.どうやら宿に忘れてきたようだ.やれやれ,今日は図書館で仕事をすることにした.図書館をはじめキャンパスのどこにいても無線LANが飛んでいる(我が大学でも是非こういう環境を整えてもらいたいものだ).
 図書館にいて気づくことは,出入りする学生にアジア人が非常に多いことである.特に韓国人がものすごく多い.韓国は不況で学生の就職先がなく,しょうがなく留学するという話を聞いたことがあるが,同じように日本が経済不況に陥った95年以降どれほど留学生が増えただろうか.特に,こちらは博士課程の学生やポストドクターは給料がもらえるので実は経済的にもお勧めなのである.ただし,仕事ぶりが悪いと映画でよく見るように首になって段ボール箱ひとつ持っておさらばである.それでも,いったん,韓国や中国のように留学に必要な勉強や準備のノウハウが日本でも広く知られるようになれば,日本からの学生の流出は止まらなくなるだろう.いや,実は静かに博士課程やポストドクタークラスでは始まっているような気がする.なにしろ日本では学生,大学院生は次世代をになうリーダーとして大切にされるとは言い難いものがありますからな.まあ,それはともかく,図書館にいると8月の終わりから新生活がスタートするフレッシュマンがガイダンスの一環として先輩に引率されてしばしば見学に来る.「ここは24時間開いていて,コピーを取ったり読んだりできるほかに,音楽やビデオの編集もできるスタジオがあって..」先輩が説明すると新入生が「ふーん.」と答える.どこの大学でも見かけるシーンではある.
 夕方図書館を出てセントラルキャンパスまで大学のバス(無料)で出る.そろそろ新学期も始まるし,本屋に中古の専門書が並ぶ頃だ.セントラルキャンパスも新入生でにぎやかだ.本屋をいろいろ見て回り,脳の解説書を1冊50ドルで買って,再び大学のバスに飛び乗った.ノースキャンパスで降りて宿まで歩いたが,夕方7時だというのにかんかん照りですごく消耗した.水筒がいるな,これは.
8月9日(木) Rain
 8時半に宿を出て,昨日同様歩き始める.歩いているとこんな標識がある.町中ですよ.途中で雨が降り始めたので,カッパを着込み,リュックにカバーを被せる.まるで山行スタイルだ.9時から1時まで研究室で作業.お昼はふたたび大学のバスに乗ってセントラルキャンパスに出て,コーリアンレストランに行く.頼んだのは"Jamg Bomg"すなわちチャンポンだ.日本のチャンポンとよく似た味だが,辛い.それにキムチなどが付け合わせと白いご飯がついておなかいっぱいである.大学に帰って夜9時まで研究室で仕事をした.外に出るとなんと建物の外を鹿の親子が散歩していた.夜行性なので夕方からこうして出てくるらしい.なんか自然にあふれているところですな.ここは
8月10日(金) Clear 引っ越し
 来週アナーバーではアンティークフェスティバルがあるとかで宿代が倍以上になる.そこで隣町に宿を変えることにした.朝チェックアウトしてそのまま学校に行き,夕方,隣町(といっても高速道路で30分くらい走る)のPlymouthのRed Roof Inn にチェックインした.Plymouthは車の名前にもなっているようにデトロイト自動車産業地域の一翼を担っている町で工場やオフォス、ショッピングモールががよく整備された芝生に取り囲まれて点在する典型的なデトロイト郊外の町である。ダウンタウンは古い町並みが少し残っていてCOZYである.
 泊まることにしたRed Roof Innは典型的なアメリカのモーテルで、高速道路のインターのそばにある.普通のホテルは建物の内側に廊下があり、その両側に部屋が並んでがインドアタイプなのに対して、このホテルは部屋のドアを開けるとそこが駐車場というオープンタイプである。「5日も泊まるのね」と受付の女性に言われる。夜中に到着して朝は出発していく客が多いのだろう。部屋もそういう作りである。まず、コーヒーメーカーとかアイロンとかという長期滞在を仮定したものが一切ない。カーテンは遮光カーテン一枚で閉めれば部屋は真っ暗、開ければ外から室内が丸見えである。でも1泊50ドルはありがたい。宿の前には、日本でもお馴染みの「ダンキンドーナツ(一つ80セントくらい)」とレストランの「デニーズ」がある。車で10分ぐらいのところにアウトドアショップのREIがあるのでちょっと寄ってみた。前からウェブでチェックして欲しいと思っていたREIのバックパック用テントが165ドルで売られている。通販で買うと値段は同じでも日本までの送料がべらぼうに高いので、買って帰ろうかなと迷う.じっと見ていると,店員さんが「コンニチハ」とカタコト日本語で親しげに挨拶してくれる.「そのンベルの靴いいね」と僕の靴を指さしながら言う.聞けば最近日本に行ったそうである.「こちらの方が2.30%は安いよ」といいながらいろいろと商品の説明をしてくれる.せっかくなのでポータブルGPSのことを聞いてみる.アメリカに来て以来,GPSが大活躍なのだが(知らないところに行くときは必ず持ち歩く),今使っているのは地図をGPS上にダウンロードできない.そこで値段が安ければ買って帰ろうかな,と思い始めたのだ.Garmin 60Csx という機種を彼は勧める.お値段450ドル.日本では12万円というべらぼうな額で売っている商品である.「安い! でも 高い!..」混乱する.とりあえずとても親切な彼にお礼を言って何も買わずに店を出る.

後でAmazon.comをチェックしたら350ドルだったのでクリックしてしまった.「やっちまった..」.まあ大切に使います.
8月11日(土) Clear 
 朝起きて近所のメトロパークであるケンジントン公園に行く.ケンジントン公園はケント湖を取り囲むようにドライブ道路や自転車道路が一周しており,湖では泳いだり,釣りをしたりすることができる.ヨットを持ってくる人もいるようだ.ケント湖の浜辺の芝生に腰を下ろし,日光浴を兼ねながら本を読む.湿度が低く,日陰は心地よい.午後から大学に行く.今日は高速ではなく一般道で行ってみる.こちらの一般道は,市中でも制限速度45マイル,郊外では55マイル(時速90km)と高速なみだ.道路のあちらこちらに車にひかれた小動物が転がっている.車ですっとばすのも怖いが,歩くのも怖い道ではある.道の両側にはよく手入れされた庭を持つ家が並んでいる.ところどころに果樹園や牧場がある.
でも遠い....(ぜいたくかな).
8月12日(日) Clear  携帯電話死す
 今日も良く晴れた気持ちのよい一日だった.宿で買った無線LANのカードは1週間有効で,宿だけではなく,スターバックスやボーダーという本屋の中でも接続できる.アナーバーの町はいたるところにスターバックスがあるので,コーヒーを飲みながら仕事をするにはとても便利だ.こちらのスターバックスはノートパソコン持ち込みの人がすごく多い理由が分かる.日本もそのうちこういう景色になるのだろう.まあ,記念にと午前中はスターバックスで仕事をする.僕が寄ったお店はMainという通りに面しているが,この通りは非常にレストランの多い通りで,そこらのお店が外にテーブルと椅子を出している.夕方ともなると通りはオープンカフェでビールを飲む人たちで毎日大にぎわいであるが今日は日曜日,それも普通の人は教会に出かけている時間なので静かである.コーヒー1杯は200円くらいなので,日本と比べて安いと感じる数少ないメニューのひとつではある.
 それはそうと,昨日から携帯がどこへ行っても「圏外」となってしまう.どうやら壊れたようだ.海外で通じるというただそれだけの理由で韓国Luchky Gold製のドコモを使っていたのに,よりによってその海外出張先で壊れてしまうなんて!
実は「圏外」表示の故障はこの1年の間に2回目である.水もかけていないし,落としてもいないのに壊れるなんて,
ちょっと許せない.お勧めしませんよSimpure Lというモデル.
 午後からは大学に移動し夜までおとなしくお仕事.それから車をとばして隣町のホテルまで帰る.やっぱり遠いなあ..夜中に昼間のお天気からは想像できない強い雨が降った.結構,大きな雨音をかき分けるように,汽笛の音がする.日本ではもう聞くことがなくなった,哀愁漂う長い長い汽笛である.そういえばこちらの貨物列車は長さが1キロくらいあるのかと思うほど途方もなく長い.などと思っている打ちにぐっすりと寝入ってしまった.